2008年03月10日

アメリカ知的財産法への誘い〜米国における職務発明(第1回)〜

日本と異なり、業務上なされた発明(職務発明)について米国特許法には明文の規定はありません。業務上の発明であっても特許の所有権は基本的に発明者に帰属します。しかし、会社が発明の開発に貢献したときには「ショップライト」と呼ばれる無償の通常実施権が認められるので、職務発明に関する限り、会社はとくに支障なくその発明を使用することができるのです。


それでは米国では職務発明をめぐる労使間の紛争はないのでしょうか。


そうではありません。そこは訴訟社会のこと、裁判事例がいくつか報告されています。ただし、それらは契約をめぐる裁判であり、一見すると他の問題のようでもあります。少なくとも「権利の帰属」という我々にわかりやすいタームで報告されることはありません。


ショップライトが判例で認められていますが、米国の雇用者はほとんど社員に対し業務上の発明を雇用者に譲渡することを契約書で明記しているのが普通です。


いわゆる発明の譲渡契約です。


しかし、この譲渡契約の文言が適切でないと、雇用者に譲渡されていたはずの発明についての権利が認められない場合があります。その好例が、IpVenture, Inc. v. ProStar Computer, Inc.事件です。


特許弁護士(A)は、ある共同発明を1994年に出願し特許を得ました(235特許)。

Aは、1992年から95年までHewlett-Packard(HP)の特許代理人を勤めており、HP在職中は業務上の発明をHPに譲渡する旨の契約に署名していました。

問題の235特許は、HP在職中にAが出願したものでした。Aは後になって235特許をIpVentureに譲渡しました。

それを根拠にIpVentureは2003年、ProStar Computer他を侵害容疑で提訴しました。それがこの事件です。


被告のProStarは次のように反論しました。つまり、IpVentureは特許権の正当な承継者ではなく、235特許の権利はHPにあると。原告のIpVentureは、ProStarに対する訴訟提起の後にHPと交渉し235特許の権利はすべてIpVentureが保有する旨の合意をHPから取り付けていました。


一審の地裁は、AとHPの間の発明譲渡契約は有効であり、提訴後に締結されたIpVentureとHP間の合意は無効であると判決しました。これに対して控訴審のCAFCは、IpVentureが裁判を提起した時点(2002年)で、HPが235特許についての権利を保有していたかどうかについて審理し、HPには235特許の権利はないと結論づけました。


その理由は、AとHPとの間の発明譲渡契約は「(Aがその発明を)譲渡することに合意した」(agreed to assign)とだけ規定するもので、この規定は「将来の」HPへの譲渡についての規定であると判断したからです。

その結果、AとHPとの間の譲渡契約の下ではHPにはAの発明についての権利がないと判断しました。



この判決を読むと米国は契約の国だと今更に思い知らされます。契約の規定が明確でなければ、雇用主であっても業務上の発明について実施権が認められないからです。

この判決に対して、HPはショップライトが認められるだろうと考えた読者がいたとすればその人は只者ではないですね。確かに、ショップライトはコモンロー(あるいは衡平法)の権利であり、契約法にもとづくものではないから今回の判決には影響を受けないと考えることもできます。

ただ、この事件では、HPは235特許に未練はなく、だからそこIpVentureにその権利を譲ることに合意した訳です。コモンロー(あるいは衡平法)上の権利であるショップライトを争うことはこの事件では考えられないといえるでしょう。
posted by J.Fujino at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | メールマガジン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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