2009年04月06日

eBay判決を契機とした日本の特許法改正(その2)

前回、日本で特許法改正の検討が進んでいて、その目玉の一つが差止請求権の廃止であることを書きました。

また、改正論の背景には、eBay米最高裁判決があったことも書きました。実は差止請求権の廃止は、「知的財産推進計画2008」の中で提言されています。

そこでは、米国のeBay判決を引き合いに出されています。推進計画は、濫用的な特許権の行使に対して規制のための何らかのルール作りが必要であるとしています。

そして、そのための手段として検討されているのが差止請求権の廃止という訳です。


知的財産推進計画2008
http://www.ipr.go.jp/sokuhou/2008keikaku.pdf

<67ページ>
(5) 知的財産の円滑・公正な活用を促進する
1 濫用的な権利行使に対応する
知財権の権利行使の仕方によっては、産業界における自由な競争に悪影響を与え、公共の利益に反する場合等があるため、2008年度から、正当な権利行使を尊重することを大前提としつつ、民法の権利濫用の法理や米国最高裁判決(eBay判決)等を考慮し、差止請求や損害賠償請求等の適切な権利行使の在り方について検討を行い、ガイドラインの作成等の必要な措置を講ずる。(経済産業省)



しかし、米最高裁判決をこのような形で、日本の知財政策の正当化理由に使うのは、もう少し慎重であるべきです。


それは、

 「eBay判決が法制度の異なる米国のものであること」

そして

 「eBay判決そのものの影響がどのようなものかまだ検証が十分ではない

ことが、理由です。


政策論としては濫用的な権利行使を規制することが正当化されても、法律として制定するためにはなにが濫用的でなにが合法的かをきちんと議論する必要があるでしょう。

「法律は10年前の事象を追う」と皮肉られますが、権利として制定された差止請求権を廃止するとなれば、それは十分な論議が必要であることは明らかです。


eBay判決は、伝統的なエクイティへの回帰を求めたものでした。

エクイティとは、個々のケース毎に差止の利益・不利益を比較考量して、救済としての差止命令の適否を決めようという米国独特の法理論です。

eBay判決の趣旨を日本でも活かそうとするのであれば、最初に差止請求権に手をつけるのではなく、むしろ衡平の観点からの利益調整の可能性を考えることが先決でしょう。特許法には「強制実施権」という格好の制度があります。むしろその活用を検討する法が、法の発展という意味でも正統だと思います。


日本の政策立案者は、米国の動きを「プロパテントからの後退」という単純化した図式でとらえているのかも知れません。筆者が、日本における差止請求権をめぐる動きに違和感をおぼえる理由はまさにその点にあります。eBay判決の意義は、当事者によって異なります。一律に「アンチパテント的」とするのは誤っています。

当事者により、事例により、eBay判決の影響が異なるのですが、日本では、伝えられるところによれば、権利としての差止請求を認めない方向で検討がすすめられているというのです。


次回は、eBay最高裁判決の影響が、下級審の心理にどのような影響を与えているかについて事例を挙げて紹介しましょう。
posted by J.Fujino at 00:00| Comment(0) | TrackBack(1) | メールマガジン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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