2008年12月08日

アメリカ知的財産法への誘い 〜 「米国特許リフォーム法案」(続き) 〜

今年の8月に本欄で、米国特許リフォーム法案の中の損害賠償規定(284条)の改正について、具体的には「エンタイヤ・マーケット・バリュー」ルールの廃止について書きました。その時には紙幅の関係でその他の改正項目については説明を省きましたが、今回は残りの改正項目について概観しようと思います。

※メルマガVol.14「特許リフォーム(改革)法案」
 http://archive.mag2.com/0000251729/20080818073000000.html

先ず、今議会が検討してきた米国特許リフォーム法案には、以下のような改正が盛り込まれています。


特許法
 102条  先願主義の導入
 118条  企業による出願
 122条  全出願公開
 122条(e) 第三者特許情報提供
 135条  インタフェランス規定の削除、冒認手続き導入
 273条  先使用権の拡大
 284条  損害賠償と故意侵害
 315(c)条 当事者系再審査のエストッペル改正
 321〜332条 登録後再審査手続の新設

裁判所法
 1400条 裁判地修正

連邦民事訴訟法
 1292条 クレーム解釈の中間控訴


特許法284条、裁判所法1400条そして連邦民事訴訟法1292条を除く改正項目は、「米国アカデミーズ」が提案した「21世紀の米国特許制度」の中に提示されたものです。米国アカデミーズは元特許庁長官、大学教授、弁護士など知財分野の有識者で構成される団体で、2004年 4月に米国特許制度の抜本的な改革を提案しました。そこで提案された項目が2005年の改正案、2007年の改正案に盛り込まれてきたのです。

実は米国アカデミーズが提案した改正項目の多くは、米国の深刻な制度疲労に対する対策としてほぼ不可欠という点ではコンセンサスがとれていました。

ところが、議会に提案された法案には、それらコンセンサスの取れている項目に加えて、損害賠償規定、裁判所法1400条、連邦民事訴訟法1292条など、一部の業界には反発が強い項目が盛り込まれたのです。

どのような理由からこれらが盛り込まれたかは明らかではありませんが、おそらく現行の特許裁判制度に問題があるという意見を踏まえてドサクサに紛れた法案に盛り込んだものと思われます。

その結果、それらの項目については、特に情報産業とバイオ産業が強く反対し当初予定していた2007年での議会通過がならず、2008年に入ってからは大統領選挙で特許リフォーム法案どころではない雰囲気になってしまったのです。

厳密に言えば、これは法案に問題があったために審理が棚上げされたというよりも、大統領選挙を含めその他の問題が焦眉の急で、特許改革法案はそれらの中に埋没してしまったと言った方が的切かもしれません。


[特許法・参考リンク]
・米国・特許法(米語)
http://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/documents/appxl.htm
・米国・特許法(日本語)
http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/mokuji/us_tokkyo1.pdf
・米国・裁判所法(英語)
 〜JUDICIARY AND JUDICIAL PROCEDURE〜
http://www.law.cornell.edu/uscode/html/uscode28/usc_sup_01_28.html
・米国・連邦民事訴訟法(英語)
 〜FEDERAL RULES OF CIVIL PROCEDURE〜
http://www4.law.cornell.edu/uscode/html/uscode28a/usc_sup_05_28_10_sq4.html
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