2008年06月18日

アメリカ知的財産法への誘い〜牛糞は発明の母(後編)〜

2番目の事例は「サクライダ事件」です。


この事件は、米最高裁がアメリカの非自明性の基準を定めた判決(1976年)として有名です。今回は少しお品のよい表現を心がけます。


サクライダ事件で争われたのは、牛の落下物を処理する方法でした。畜舎ではこれを清掃するのに、箒を使って掻き集めたり、ホースの水で側溝に流したりいずれにしても人手の要るしかも時間のかかる作業でした。


ある人は、これを人力に頼るのではなく、水を使って短い時間ですませるために、畜舎近くに水を堰き止めておいて、必要に応じてその水をあふれさせて畜舎の床一面に流して牛の落下物を洗い流す方法を考えついたのです。お風呂からあふれるお湯で、風呂場の床の上のものが流されるのをイメージしていただくとよいかもしれません。


彼の方法は特許出願されました。この方法は、既知の要素を組み合わせたものでしたが、人力によるものではない点やプールからあふれた水は面となって短時間に落下物を流し去ることができるなど、これまで箒やホースを使った清掃方法とは違って効率も良いため特許は成立しました。特許庁は非自明だと判断したのです。


しかし、この特許は裁判所でその有効性が争われました。最後は、最高裁にまで行き着きました。最高裁は、既知の要素の組合せ特許が保護されるためには、相乗効果がなければならないとしました。また、相乗効果は異なる機能によって立証されるのであって、単に以前の組合せより際立った結果を生み出しただけでは不十分であるとして、特許を無効としました。このサクライダ事件の最高裁判決は、非自明性(米特許法103条)の重要判例の一つです。


さて、なぜ今「サクライダ事件」かというと、実は本メルマガの最初に論じたKSR事件の最高裁の判決と関係するのです。KSR事件での最高裁判決は、非自明性の基準を、1966年の「グラハム対ジョンディア判決」(1966年)に戻すものであるとされていますが、もう少し正確にいうと、公知の組合せになる発明については、その後のサクライダ事件の最高裁判決が先例になるのです。組合せによって何か新しい機能が生まれていないと非自明とはいえないという非自明性のハードルを高くした判例でした。


ですからKSR事件の先例はサクライダ判決だといっても過言ではありません。



[Sakraida v. Ag Pro, Inc.事件・参考リンク]
・Justia.com
http://supreme.justia.com/us/425/273/case.html

・Sakraida v. Ag Pro, Inc.関連特許 US3223070
http://v3.espacenet.com/origdoc?DB=EPODOC&IDX=US3223070&F=0&QPN=US3223070
posted by J.Fujino at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | メールマガジン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
韓国はこうやって文化の面から日本を侵略しようとしてると思うんだよね。
Posted by 佐伯日菜子 子供 at 2013年06月13日 15:50
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